下肢静脈瘤は主に立ち仕事の人がなりやすい病気ですが、実は妊娠や出産が原因となることが多いのです。
しかしどのような原因やメカニズムがあるのか、詳しくはわからないという人も多いのではないでしょうか。
男性よりも女性に症状が出やすい理由やむくみとの関係など、気になることがたくさんあります。
妊婦や産後はマイナートラブルが多くなりますが、具体的な原因について知りたいですよね。
そこで今回は下肢静脈瘤は妊婦や産後にできやすいのか、症状が出る原因を3つご紹介していきます。
下肢静脈瘤ができる原因やメカニズムとは?
全身の血液は心臓から足へと流れていき、その過程で汚れてしまった血液が静脈を通ってまた心臓に戻っていきます。
この流れがスムーズにいけば良いのですが、足は心臓よりも下の位置にあるため重力に負けない力で流していく必要があるのです。
この時に重要になるのが、心臓へと流れていく血液が逆流しないようにするポイントです。
普段は静脈にある弁により、血液の逆流を防いでいます。
この弁が妊娠や出産によって壊れてしまうことが原因で、血管内に血液がたまってコブができてしまうのです。
見た目だけでもすぐにわかりますが、触ってみるとボコボコとしています。
血管内にあった逆流防止のための弁が壊れて、逆流した血液がコブをつくっているのですね。
足の静脈にできたコブのことを、下肢静脈瘤といいます。
下肢静脈瘤が男性より女性に多い理由とは?
下肢静脈瘤の患者は男性に比べて、女性に多く見られる疾患です。
その理由のひとつに、妊娠や出産といったライフイベントがあります。
日本人の場合は女性のおよそ4割に何かしらの症状があるといわれ、手術が必要な状態の人は8.7%でした。
両親に症状があった場合は、その子供は90%の確率で瘤ができる可能性が高くなります。
つまり遺伝による影響も強いと考えられるのです。
女性はホルモンバランスの変動が激しいこと、妊娠出産をすること、そして筋力が男性に比べて少ないことなどが原因です。
そして年齢を重ねるごとにリスクも高くなるので、高齢出産では症状が出る人がかなり多くなる傾向にあります。
自分では気づいていなくても、足や付け根周辺などに瘤ができていることがあるのです。
下肢静脈瘤はむくみを放置することが原因?
下肢静脈瘤はむくみを放置した場合に悪化してできることが多いので、まずは日常的に足をチェックしましょう。
むくみは心臓から流れてまた戻っていく血液循環のサイクルの中で、水分の再利用がうまくいかずに皮膚の下に浸出してしまう症状です。
血液循環がうまくいかなくて瘤ができるのと同じようなメカニズムなので、このふたつの症状は切っても切り離せない関係があります。
水を飲み過ぎたなど生理的な原因であれば良いのですが、特に妊婦は血液循環が悪くなりやすいのが特徴です。
むくみを単なる「いつものこと」だと放置していると、瘤がひどくなりやすいのです。
妊婦検診では毎回医師や助産師が足を触って、むくみが出ているかのチェックをおこないます。
もし、むくんでいると指摘を受けた場合には瘤になって痛みが出ないように、または悪化しないように対策をしていきましょう。
下肢静脈瘤が妊婦や産後にできやすい原因3つ
血管内に瘤が妊婦や産後にできやすいのは、妊産婦特有の理由や生活習慣の変化などがあるためです。
原因をしっかり把握して、足がボコボコしているのを見つけても慌てないようにしておきたいですね。
それでは足がむくんだり瘤ができたりする3つの原因を、順番に見ていきましょう。
ホルモンバランスによるもの
妊娠中はホルモンバランスがガラリと変わりますが、特に子宮内の環境を整えるために黄体ホルモンが多く分泌されます。
黄体ホルモンは子宮を柔らかくして赤ちゃんにとって心地よい状態にするのですが、血管をいつもよりも柔らかくする作用があるのです。
妊娠すると赤ちゃんにも血液を送らなくてはならないため、血液の水分量がおよそ2倍に増えます。
血管の柔らかさが増すと一気に血液が流れ込んでしまうことがあるため、血液逆流防止の弁がうまく働かなくなって足の血液が心臓にうまく戻れなくなってしまうんですね。
心臓に戻れなかった血液が血管内にたまり、瘤をつくってしまうのです。
お腹が大きくなってくるため
妊娠後期にもなると、赤ちゃんも大きく成長するのでお腹がかなり大きくなってきます。
お腹が大きくなると同時にどんどん血液の流れる道が圧迫されて、血液循環がより悪くなります。
血管が圧迫されると逆流防止の弁も圧迫されてうまく機能できなくなり、瘤ができるリスクが高くなるのです。
お腹は安定器を過ぎたあたりから急に大きくなってくるので、個人差はありますが妊娠7ヶ月から血行が悪くなっていると自覚する妊婦さんが多いようですね。
ただし黄体ホルモンは妊娠初期から分泌されているので、瘤ができるリスクは初期から高めになります。
運動不足になりやすいため
妊娠時や産後は具合が悪かったり運動ができる状況ではなかったりして、とにかく運動不足により筋力が低下しやすくなります。
筋力が弱くなると足から重力に逆らって心臓へ戻る血液が、うまく心臓に到達できなくて逆流しやすくなるのです。
女性はただでさえ男性よりも筋力が低いので、さらに筋力が下がると瘤ができるリスクは非常に高いんですね。
下肢静脈瘤が経産婦に特に多い原因とは?
下肢静脈瘤は初産の女性よりも、はるかに経産婦の方が症状が出る確率が高くなります。
運良く1人目の妊娠時に瘤ができなかったとしても実は血管はダメージを受けていて、負担は蓄積しています。
これを2人目、3人目と重ねていくと…負担がどんどん溜まってリスクが高くなる一方なのです。
また経産婦は自然と高齢にもなりやすいので、ますますリスクが上がる傾向にあります。
経産婦は初産の時以上に足がむくんでいないかチェックしたり、瘤ができないように対策をしたり気をつけましょう。
下肢静脈瘤が妊娠中や産後にできたら治らない?
瘤ができてしまうと足がボコボコした見た目になったり、血管が青く浮き出ているように見えたり気になってしまいます。
ここで気になることのひとつが、妊娠中や産後にできた瘤は治すことができるのか?ということです。
実は一般的に下肢静脈瘤は、一度なると自然には治らないといわれています。
弾性ストッキングも、進行を防ぐだけで治すことはできないのです。
そのため外科で硬化療法や手術などの治療がおこなわれたり、レーザー治療などの方法がおこなわれたりするのですね。
しかし妊娠中や産後にできた血管内の瘤に関しては、産後しばらくすると自然に治まってくることがほとんどです。
そのため妊娠中からできたとしてもすぐには治療せず、産後半年くらいまで様子見をする場合が多いのですね。
まとめ
下肢静脈瘤は妊婦や産後にできやすいのか、症状が出る原因を3つご紹介してきました。
男性よりも女性に多い病気で、これは妊娠や出産によってできることが多いからという理由です。
むくみなどがよく見られる症状で、日本人女性のおよそ4割がなにかしらの瘤があるといわれています。
妊娠によってホルモンバランスが変わり、黄体ホルモンが多く分泌することで血管が柔らかくなって血管内で逆流を起こしやすくなります。
またお腹が大きくなることで血液循環が悪くなったり、産後も含めて運動不足になりがちだったりするのが原因なのです。
初産よりも経産婦に多く見られる疾患なので、日頃からチェックをしながら経過を見ていくようにしましょう。