主に長時間の立ち仕事などでなりやすい下肢静脈瘤は、軽症であれば特に不快な症状もなく、気づかないこともあります。
しかし悪化してくると痛みが出たり、だるさや皮膚の異常が出るなど見た目にも大きな悪影響を与えます。
命に関わる病気ではありませんが、やはり見た目の上で不安要素は大きいのです。
瘤ができやすいハイリスクのタイプに、妊娠や出産経験のある女性があります。
2人に1人はなんらかの不快な症状があるともいわれており、ひどくならないように気をつけたいところです。
そこで今回は下肢静脈瘤が妊娠中にできやすく、産後に悪化しやすい理由を4つご紹介していきます。
下肢静脈瘤の中でも妊娠中に悪化するもの
妊娠中はホルモンバランスが変化して血液循環に影響を与えて、瘤ができやすくなります。
妊娠すると多く分泌する黄体ホルモンが、血管を柔らかくして血液が血管内に溜まりやすくなってしまうのです。
通常ふくらはぎにできやすいのが特徴ですが、実は妊婦の場合はほかの場所に瘤ができる可能性があります。
具体的にどんな場所にできて、悪化するとどうなるのかを見ていきましょう。
会陰部などにできる静脈瘤
多くはふくらはぎにできる血管内の瘤が、会陰部にできる場合があります。
自然分娩の際は赤ちゃんがより出てきやすくするために会陰切開をおこないますが、瘤ができているとうまく切開できなくなる可能性があります。
ただ赤ちゃんが出てくるときに邪魔になることはまずないので、痛みなどが気にならなければ通常通り出産できるでしょう。
直腸や膣にできる静脈瘤
直腸や膣などにできる瘤のことを「陰部静脈瘤」といい、ひどくなるとプルーンくらいの大きさに肥大することがあります。
直腸や膣に瘤ができると出産の時に赤ちゃんが通りにくくなって、うまく娩出がおこなわれない危険性があるのです。
そのため瘤の大きさや場所によっては、自然分娩はできないと判断されて帝王切開になる可能性があります。
下肢静脈瘤が妊娠中悪化しやすい人はどんなタイプ?
ただでさえホルモンの変化などで妊娠中は血液が下半身に溜まりやすくなります。
その中でも特に症状がひどくなりやすいタイプがいるのですが、どういった妊婦が当てはまるのでしょうか。
主にこれからご紹介する3つの傾向があった妊婦の場合は、リスクが高くなると言われているので見ていきましょう。
安静指示で横になっていた
重症妊娠悪阻や切迫流産、切迫早産で入院していたり自宅安静が長かった人はリスクが高くなります。
体調が安定しないので適度な運動をすることができず、血行が悪くなってしまうのです。
横になっていることで足と心臓の高さが同じになるため、一見すると瘤は出来にくいように感じますよね。
しかし血行不良で筋力が落ちることから、リスクは高いことに間違いはありません。
寝ている状態でも枕などを使って足を高めの位置に持って来れば、少しはリスクが下がるでしょう。
妊娠高血圧症候群の傾向がある
妊娠中に血圧が急上昇して、母子ともに危険な状態になる妊娠高血圧症候群。
妊娠高血圧症候群の症状としてひどいむくみがあり、下肢静脈瘤を併発している確率も高いのです。
妊婦健診で毎回血圧が高めの人やむくみが激しい人は、瘤ができていないか下半身をチェックする必要があります。
塩分摂取量を控えて水分を十分にとり、経過を観察しましょう。
急激な体重の増加があった
妊娠中の女性の多くが悩むのが、急激な体重の増加です。
毎回の健診のたびに注意されてしまうくらい増加が激しい場合には、下半身にかなりの負担がかかります。
下半身に負担が大きくなるほど瘤ができる可能性は高くなるので、急激な体重増加には気をつけたいところです。
食欲をコントロールし、なるべくローカロリーなものを取り入れるようにすると良いですね。
妊娠中の食べ過ぎは瘤の他にも思わぬ病気や難産につながりやすいので、食べる量はきちんと計算しましょう。
下肢静脈瘤ができると帝王切開になる?
多くの妊婦が心配になっていることとして、瘤ができていることで帝王切開になるのかが挙げられます。
よくできるふくらはぎであれば問題はないのですが、陰部静脈瘤ができて場所が悪かった場合は自然分娩が難しいことがあります。
分娩の際に膣や外陰部に瘤ができていると、スムーズに赤ちゃんが出られなくなってしまうのです。
また痛みがひどい場合には力を入れていきむことが難しく、分娩が進まなくなることもあります。
分娩中の母胎への安全を考えると、自然分娩は適さないと考えられることが多いのですね。
ただしできた瘤の大きさや場所など、医師の判断では自然分娩が可能になる場合もあります。
下肢静脈瘤はレーザーや手術などで治療する方法がありますが、妊娠中から産後は経過観察をする場合がほとんどなんですね。
帝王切開になることが決定するわけではないので、早い段階から医師に相談することが大切です。
下肢静脈瘤は産後のママが特に悪化しやすい!
産後は妊娠中から出産時の影響を強く受けるので、体調を崩しがちです。
下半身にできた瘤も一部は回復してくるものの、産後に悪化することもあるのです。
ではどうして産後にひどくなりやすいのか、4つの原因を見ていきましょう。
出産の時に強い腹圧がかかる
自然分娩の場合は赤ちゃんを外に出すために、非常に強い力を出していきみます。
このとき腹圧が強くかかるので、血液の逆流防止の弁が壊れて下半身に血液が溜まりやすくなるのです。
出産を終えたらありえないくらいむくんだという人は多く、瘤がひどくなりやすいんですね。
産後は便秘がちになりやすい
産後は授乳もあり、常に体の水分が足りない状態です。
また会陰切開の傷口が気になるなどの理由で、便秘がちになりやすいのですね。
便秘がちでトイレでいつもいきんでいると、腹圧がかかることで下半身がむくみやすくなります。
瘤ができている場合もひどくなりやすいので、力の入れすぎには注意が必要です。
出産を機に体重増加しやすい
妊娠中に体重が増えすぎてしまった人は、産後もなかなかもとの体型に戻すのは難しくなります。
体が重くなって、さらに赤ちゃんまで抱っこしているとより下半身にかかる負担が多くなるのです。
負担がかかっている状態が長く続くと、症状が悪化することがあります。
産後は運動不足になりやすい
産後1ヶ月は産褥期であることもあり、安静にしておかなければなりません。
また赤ちゃんのお世話で忙しくなるため運動不足になりやすく、血行不良を訴える人が多くなります。
血液の流れが悪くなると、瘤ができやすくなるので注意が必要です。
血行不良と筋力低下によりむくみがひどくなり、瘤ができやすくもなるのです。
まとめ
下肢静脈瘤が妊娠中にできやすく、産後に悪化しやすい理由を4つご紹介してきました。
妊娠中はホルモンバランスの変化もあり、特に陰部に瘤ができてしまうことがあります。
陰部に瘤ができると、大きさや場所によっては自然分娩ができなくて帝王切開になる可能性もあるのです。
産後に特に悪くなりやすい理由は分娩時のいきみや体重増加、そして運動不足や便秘が挙げられます。
つまり、安静指示が出ていたり急激な体重増加があったり、産後は下肢静脈瘤になるリスクが高い傾向にあるのですね。
産後に症状が良くなることも多いですが、症状がひどくならないように弾性ストッキングを履くなど日頃から気をつけていきましょう。